谷口崇(ILCA)

連続小説『夕立のあとに』~第3話~
バサッ。「…!」詩織の手から参考書が落ち、3人の時間を止めた。目が合う詩織と女子生徒。男の子は、女子生徒の手を握ったままうつむいている。「あの…」なんとかしぼり出した詩織の声をさえぎり、女子生徒が男の子に話しかける。「…じゃあ、また。」そして詩織と目を合わすことなく、音楽室から出て行った。男の子は下を向いたまま、やり場のない手をそっと鍵盤に置いた。翌朝も、その翌朝も、彼の家からは、穏やかなピアノの音色が聞こえてきた。ただ、詩織にはその音が、どこか自分とは違う世界へと流れていくような、それを自分が聞いてはいけないような気がして、いつしか耳をふさいで家の前を走り抜けるようになった。そんなある日、バス停で参考書を見る詩織の視界に白い杖が入ってきて、同じ学校の制服らしき人影が横に並んだ。その顔を見上げた詩織は、思わず声を出した。「あ…!」

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